自由でしあわせなスティンキー!?
この春、ムーミンバレーパークに新登場、大きな話題と注目を集めているスティンキー! 今回はそんな旬なスティンキーと、彼が登場するエピソードにスポットを当ててみましょう。黒くてモジャモジャ、いたずらが大好きなスティンキーについては以前のブログでも詳しくお伝えしましたが、コミックスだけで活躍するキャラクターです。
ムーミンバレーパークの「エンマの劇場」では、2019年「楽しいムーミン一家~春のはじまり~」、2020年「勇気を知った少女~ムーミン谷の仲間たちより~」と、ムーミンの小説を元にした子どもだけでなく大人も楽しめるショーを上演、大好評を博してきました。
2周年を迎えた2021年の新しいショー「自由でしあわせな生活」は雰囲気が一新! 原案に選ばれたのはコミックス「預言者あらわる」( 第5巻『ムーミン谷のクリスマス』収録/筑摩書房刊/冨原眞弓訳)です。
いったいどんなお話なのか、ショーでは描かれていない細かい部分にも注目しつつ、ざっくりとご紹介していきましょう。
ムーミン谷にいきなり現れた預言者。「しあわせであれ! 自然に返れ! 自由でしあわせな生活に!」という預言者の言葉に感化され、みんな仕事を放り出して、好き勝手し始めます。
ムーミンパパは「義務感なんてやっかいなお荷物さ」と、木の上にお引っ越し! この場面、アラビアやVAJA Finland<ワヤ フィンランド>のマグカップでもおなじみですね。
「悪人なんかいないんだ」と、牢屋の囚人たちを解放してしまった預言者。そのなかにスティンキーの姿も!
楽しげなミムラねえさんと、心配そうなムーミントロール。自由の身になったスティンキーは何を企んでいるのでしょうか!?
スティンキーがムーミンパパに差し出したのは、とびきりの密造酒マンハッタンダイナマイト!
浮かれていたムーミンパパは飲み過ぎで胃が痛くなり、雨に降られて、快適なムーミンやしきが恋しくなってきました。
新しいボーイフレンドと遊ぶスノークのおじょうさん。それを見たムーミントロールはワイルドな仮装をして「黒い手」と名乗り、おじょうさんを取り返しに向かいます。
一方、みんなのためにケーキを作って待っていたムーミンママも、ついに心のおもむくままに自由な生活を開始。
さんざんみんなをたきつけて、おもしろがっていたスティンキー。もっとコトをややこしくしようと、厳格な黒の預言者を呼び寄せました。
黒の預言者の教えは、今までの預言者とは正反対。「まっとうな生活を! 義務と犠牲と反省の日々を!」と、人々に改心を迫ります。
自由な生活に疲れ果てていたムーミン谷のみんなは心機一転。ムーミンパパは「これからはコケモモジュースしか飲まないぞ!」と、マンハッタンダイナマイトの瓶を投げ捨てました。スノークのおじょうさんは「ハデなおしゃれは罪だ」という黒の預言者の言葉に従い、ご自慢のアンクレットを外し、なんと前髪まで切ってしまいます!
自由に生きるのも、その逆も、なかなか難しいと知ったムーミンたち。
そんなとき、ふたりの預言者がついに対面、大ゲンカになってしまいます。ふたりを仲直りさせたのはムーミンママ! 預言者たちが立ち去って、ムーミン谷に元の穏やかな生活が戻ってきました。
最後にちょっとひねりの効いたオチも用意されていますので、ぜひご自身で読んでみてくださいね。
このエピソードは平成アニメ『楽しいムーミン一家』では第81話「新しい生き方のすすめ」で描かれています。ストーリーはかなりアレンジされていて、ふたりの預言者をひとりのキャラクターにまとめた謎の預言者シアワセさんが登場。「しあわせになるでおまー」という決めゼリフを覚えている方、いらっしゃるでしょうか。
ムーミンバレーパークのエンマの劇場の「自由でしあわせな生活」も、原作を大切にしつつも、小栗了さんによる巧みな演出で再構成。ふたりの預言者の表現など、そうきたか!という驚きがありました。
なかでも、スニフも加わって三人で歌い踊るマンハッタンダイナマイトジュースの歌はインパクト大、一度聞いたら耳から離れません!
魅惑のマンハッタンダイナマイトってどんな味なのか、気になりますよね!? ステージ裏手の売店ピカルオカではノンルアルコールがカップで、コケムス2階のショップ&カフェではアルコール入りとノンアルコールの2種類がたっぷり楽しめるカラフェで提供されていますので、ぜひ味わってみてください。カフェにはスティンキーをイメージしたスイーツもありますよ。
約30分の枠のなかで、ステージショーという形では折り込むのが難しいと思うのですが、原作コミックスにはムーミントロールのコスプレやスノークのおじょうさんの短い前髪姿、ハンドバッグもエプロンも投げ捨てて泳ぐムーミンママなど、ショーには出てこないユニークな描写がいっぱい! 原作を知るとショーがより深く理解できると思いますので、予習復習、オススメです。
以前は当たり前のようにそこにあった自由。緊急事態宣言などで制限を受ける生活を続けていると、自由って何だっけ、しあわせな生活って?と改めて考えてしまいますね。
息苦しさを感じたら、ムーミンの物語のページをめくってみましょう。パークや海外には気軽に行ける状況ではありませんが、本やコミックスはいつだってあなたのそばにあります。自由気ままで楽しそうなスティンキーの顔を見るだけで、なんだかちょっと肩の力が抜けるような気がしませんか?
萩原まみ(文と写真)